loafhudson

友人の家にお邪魔し、そろそろ帰ろうかというときの話だ。何気なく自分のカバンを見たら、小ポケットに入っているはずの鍵が入っていないことに気づいた。おや、おかしいな、とカバン周りを探してみたものの、見つからない。友人たちにも頼んで部屋中、いや家中を探したけれど見つからない。そこで私は初めて事の重大さに気づいたのだった。

それだけ友人の家を探してもないということは、友人の家に来る前の行動にヒントが隠されているはずだ。私は車を時間決め駐車場に停めたあと、デパートに寄って手土産を買ってから友人宅を訪れたのである。となると考えられるのはデパートしかない。そこで先ほど購入した手土産のお店に電話し、デパートの総合につないでもらって鍵が届いていないか確認してもらった。だが該当するような鍵は届けられていないとのこと。私は途方に暮れてしまった。すると友人の一人が「もしかしたら拾った人が○○交番に届けてくれたかもしれないよ」だけど私も含め友人たちみんなには「ないない」という空気が広がった。なぜならそのデパートから一番近い○○交番、近いと言っても徒歩5分以上かかるし、駅から離れた場所にある。そのためわざわざ鍵を拾った人がその交番まで届けてくれるとは思えなかったのだ。だけど私は一縷の望みをかけてその交番に向かった。

その交番にはお巡りさんが二人いて、私がガラガラと扉を開けると一斉に振り向いたので思わず踵を返そうかと思ってしまった。が、このままでは帰れないと思い、意を決して尋ねた。すると、なんと、予想に反し届けられていたのだ!嘘でしょ!

お巡りさんによると、私が鍵を落としたと思われるちょうどそのすぐあとくらいに、スーツを着たサラリーマン風の男性が届けてくれたのだそうだ。しかも急いでいるからと名前も名乗らずに。他人の鍵を拾った上に遠い交番まで届けてくれたその紳士的な対応にうるっときてしまったのであった。